親から実家などの不動産を相続したものの、「忙しくて時間がない」「急がなくても大丈夫だろう」と、名義変更の手続きを後回しにしていないでしょうか。
結論から申し上げますと、相続登記(不動産の名義変更)を長期間放置すると、将来的に手続きが非常に複雑になり、ご家族の負担が増えてしまう可能性があります。さらに、法改正により相続登記が義務化されたため、期限を過ぎると過料の対象になることもあります。
この記事では、「相続登記をしないとどうなるのか」という疑問にお答えし、放置するデメリットや手続きの必要性について、司法書士がわかりやすく解説します。記事をお読みいただくことで、今何をすべきかが明確になり、安心して次の一歩を踏み出せるようになります。
相続登記とは?
相続登記とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた不動産の名義を、相続人へ変更する手続きのことです。
土地や家などの不動産には、誰が所有しているかを示す「登記(とうき)」という記録が法務局に保管されています。親が亡くなって不動産を引き継いだ場合、この記録を親の名義から新しい所有者(相続人)の名義へと書き換える必要があります。
つまり、相続を原因として不動産の名義変更を行うことが「相続登記」です。
相続登記を放置するとどうなる?

相続登記 しないとどうなるの?
と疑問に思う方も多いでしょう。
相続した不動産を放置していると、主に以下のような5つの問題が発生しやすくなります。
過料の可能性
相続登記は法改正によって義務化されました。
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
不動産登記法 | e-Gov 法令検索
期限内に正当な理由なく手続きを行わなかった場合、10万円以下の過料(罰金のようなもの)が科される可能性があります。
(過料)
第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
不動産登記法 | e-Gov 法令検索
不動産が売却できなくなる
不動産を売却したり、担保に入れてお金を借りたりするためには、名義が現在の所有者になっている必要があります。亡くなった方の名義のままでは、不動産を売却することができません。いざ「実家を売りたい」と思ったときに、すぐに動けない原因となります。
相続人が増えて手続きが困難になる
相続登記を放置している間に、相続人の一人が亡くなってしまうことがあります。すると、その亡くなった方の配偶者や子どもが新たな相続人として加わる「数次相続(すうじそうぞく)」という状態になります。
関係の薄い親戚同士で話し合い(遺産分割協議)をする必要が出てくるため、意見がまとまらず、手続きがストップしてしまうケースがよく見られます。
相続人の認知症で手続きできなくなる
時間が経つにつれて、相続人自身が高齢になり、認知症などで判断能力が低下してしまうリスクもあります。もし判断能力が不十分とみなされた場合、そのままでは遺産分割協議ができません。成年後見人を選任するなどの追加手続きが必要となり、時間も費用も大きくかかってしまいます。
空き家問題につながる
実家が空き家になっている場合、名義変更をしないまま放置していると、誰が管理の責任を負うのかが曖昧になります。適切に管理されずに老朽化が進むと、近隣トラブルの原因になったり、「特定空家」に指定されて固定資産税が高くなったりする可能性があります。
相続登記が義務化された背景
これまで、相続登記には期限や罰則がありませんでした。そのため、「費用がかかるから」「面倒だから」と手続きがされないままの土地が増加しました。
これが、いわゆる「所有者不明土地問題」です。日本全国で、持ち主がわからない土地が九州の面積よりも大きくなってしまい、公共事業や災害復興の妨げになっていました。こうした社会問題を解決するため、国は法律を改正し、相続登記の必要性を高めるために義務化へ踏み切ったのです。
相続登記の期限と過料
相続登記の義務化に伴い、具体的な期限と罰則が設けられました。
- 期限:不動産を相続したこと(所有権の取得)を知った日から3年以内
- 罰則:正当な理由なく期限を過ぎた場合、10万円以下の過料
例えば、令和6年(2024年)4月1日の義務化スタートより前に相続が発生していた場合でも、義務化の対象となります(この場合は令和9年(2027年)3月31日が期限です)。
ご自身のケースで期限がいつになるのか、早めに確認しておくことが大切です。
相続登記に必要な書類
相続登記をご自身で行う場合、以下のようないくつかの書類を集める必要があります。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本(抄本)
- 不動産を相続する相続人の住民票
- 固定資産評価証明書または課税明細書
- 遺産分割協議書および印鑑証明書(話し合いで決めた場合)
古い戸籍は文字が読みづらく、複数の役所から取り寄せる必要があるため、一般の方にとっては非常に手間のかかる作業になりがちです。
相続登記を司法書士へ依頼するメリット
相続登記は自分で行うことも可能ですが、司法書士へ依頼することで多くのメリットがあります。
- 面倒な戸籍収集を任せられる:役所での複雑な書類集めをすべて代行します。
- 正確な書類作成:専門知識に基づき、間違いのない申請書類を作成します。
- 法務局への対応:申請から完了まで、法務局とのやり取りをお任せいただけます。
- 複雑な相続にも対応:相続人が多い場合や、数世代前の名義になっている場合でもスムーズに解決へ導きます。
専門家にお任せいただくことで、時間と精神的な負担を大幅に減らすことができます。
まとめ
- 相続登記は不動産を相続したこと(所有権の取得)を知った日から3年以内に申請する必要がある。
- 相続登記義務化前に相続が発生していた場合でも、令和9年(2027年)3月31日までに相続登記を申請する必要がある。
- 正当な理由なく期限を過ぎた場合、10万円以下の過料の適用対象となる。
相続した不動産を放置していると、手続きが複雑化して親族間のトラブルに発展したり、法改正による過料の対象になったりと、ご自身やご家族への負担が大きくなってしまいます。
「いつかはやらなきゃ」と思っているうちに、相続関係が複雑になってしまうケースは珍しくありません。ご家族の安心のためにも、相続登記は後回しにせず、できるだけ早く進めることをおすすめします。

